受給事例:先天性の手指欠損と発達障害がある女性。家庭に頼れない状況から一人で障害年金申請へ。障害基礎年金2級を受給

相談者:20代、女性
職業:派遣社員
傷病名:先天性手指欠損、発達障害
決定した年金種類と等級:障害基礎年金2級
支給額:年額約80万円

『相談時の状況』
今回ご相談いただいたのは、20代の女性でした。
派遣社員として働きながら、一人暮らしをしているとのこと。ご本人は、生まれつき手の指の一部が欠損している先天性の障害があり、加えて軽度の発達障害もあるとのことでした。

育った家庭環境は非常に複雑で、出生直後に実母からの育児放棄があったため、乳児院に預けられ、その後児童養護施設で育てられたという背景がありました。
18歳で施設を出た後は、自立支援機関のフォローを受けながら一人で生活を続け、何とか就労しているものの、障害により仕事の選択肢は限られ、生活の不安定さを常に抱えているということでした。

ある日、障害年金の制度があることを知り、ネットで調べるうちに、当事務所のサイトを見つけ、「一人では難しそうだ」と感じてご相談に至りました。

『申請に向けた壁と課題』
障害年金の申請において、先天性の障害を持つ方の場合は「20歳前障害」としての扱いになりますが、重要になるのが「初診日」の証明です。

しかし、彼女の場合は生まれた直後に家庭と縁が切れており、母子手帳や出生時の医療記録など一切の資料が手元にありませんでした。

ただ、幸いなことに、彼女は14歳の時に整形外科を受診した記録があるとの情報が、当時の児童養護施設の職員の方から得られました。

私たちはすぐにその医療機関に照会し、受診状況等証明書を取得することに成功しました。さらに、療育手帳を保持していたため、初診の証明はこの二つを組み合わせることで問題なくクリアすることができました。

『少しずつ、焦らず手続きを進める』
また、ご本人には発達障害の特性があり、情報の整理や理解に時間がかかる面があったため、申請の準備は「焦らず、少しずつ進める」方針をとりました。

面談では、毎回一つひとつの手順を丁寧に説明し、本人が納得して進められるよう配慮しました。書類の記載や病歴の整理も、ご本人の言葉を大切にしながら、時間をかけて丁寧に進めていきました。

本人にとっても、「これまで誰にも頼れなかった中で、相談できる人がいること」が大きな支えになっていたようでした。

『診断書作成と提出』
診断書は、現在通院中の整形外科の医師に依頼しました。手指の欠損によって日常生活にどのような支障が出ているのか、具体的に記載してもらう必要がありました。

加えて、「病歴・就労状況等申立書」では、幼少期からの生活状況、施設でのエピソード、自立後の困難などをご本人の記憶と施設職員にも確認いただき、丁寧にまとめました。

『受給結果とその後』
申請から数ヶ月後、無事に障害基礎年金2級が認定されました。
支給額は年額約80万円となり、生活費の補填や今後の暮らしへの備えとして、大きな安心材料となりました。

これまで誰にも頼れず、自力で生きてきた重みを感じさせる瞬間でした。

『最後に〜支援のつながりが人生を変える』
今回のケースのように、家庭に頼れない背景を持ち、一人で障害と向き合って生きてきた方にとって、障害年金の制度は単なる金銭的な支援以上の意味を持ちます。

「自分の困難が認められた」という承認の感覚。
「もう少し安心して生きていける」という未来への希望。
それを支えるのが、私たち社会保険労務士の役割だとあらためて感じました。

もしあなたの周りにも、「申請の仕方がわからない」「親がいないから無理かも」と諦めている方がいれば、ぜひ一度ご相談ください。
制度と支援をつなげることで、未来は変わります。

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この記事を書いた人

日本障害年金申請サポートセンター
(社会保険労務士法人 日本労働教育総合研究所)

神奈川県の社労士法人で、年間400件以上の障害年金請求に携わっている。
身体障害・精神障害共にサポート可能。

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