年金の未納期間が長く限られた条件の中で障害基礎年金を5年分遡及請求出来た事例

目次

📌 障害年金とは?—制度の基礎をやさしく説明

1. 障害年金の概要

障害年金は、病気やけがによって日常生活や仕事に支障が出た場合に、経済的な支援を行う公的制度です。年金には大きく分けて次の2種類があります:

  • 障害基礎年金:国民年金(第1号被保険者や専業主婦など)の加入者が対象。障害の程度に応じて1級または2級が支給されます。
  • 障害厚生年金:厚生年金に加入する会社員などが対象。1~3級まであり、等級が上がるほど支給額が増えます。

支給金額は等級によって決まり、原則として年に一度、翌年にまとめて支払われるのが特徴です。また、過去に遡って請求できる**「遡及請求」**という制度もあります(最大で5年分)。

2. 障害年金を受け取るためのポイント

受給にはいくつかの要件がありますが、特に重要なのは以下の2点です:

  1. 初診日
     最初に医療機関を受診した日=「初診日」が非常に重要です。基礎年金と厚生年金とで、どの医療機関を受診したか、また納付要件を満たす期間内かどうかが問われます。
  2. 保険料納付要件
     通常、初診日の前日までに保険料を一定以上納めている必要があります。納付が滞っていると、支給条件を満たせないことがあります。

これら2つをクリアできなければ、そもそも年金の審査対象にならない、ということになります。そのため、初診日の証明と納付状況の確認が、申請の第一歩となります。


🎯 今回の事例:40代男性・双極性障害のケース

● 基本情報

  • 相談者:40代、男性
  • 職業状況:無職。長期間、働けていない
  • 傷病名:双極性障害
  • 受給結果
     – 年金の種類・等級:障害基礎年金2級
     – 支給額:年額約80万円
     – 遡及額:約430万円(5年分)

● 発症・これまでの経緯

学生時代から気分の落ち込み(抑うつ状態)があり、不眠にも悩まされていました。気分の波が激しく、「仕事を始めても、抑うつの波が突然やってくる」→長く続けられない状況が続きました。そのため、40代になっても“働いた経験ゼロに近い”状態が続いていました。


🧩 相談時に直面した大きな壁

1. 保険料の未納が多く、納付要件の確認が必要

長期間無職状態が続いたため、年金記録から多数の未納期間が発覚。年金請求に必要な保険料をきちんと納めていないと、そもそも審査対象(「要件を満たす初診日」)となりません。
→ 初めての課題は「どの期間が要件を満たすか」を把握することでした。

2. 初診日が「かなり昔」で、医療記録(カルテ)が残っていない可能性

双極性障害の発症は成人前後で、診療機関も過去の病院である可能性が高く、
**「病院名はわかってもカルテが残っていない」**という状況が予想されました。
診断書などの作成に必要な医療記録があるかどうか、事前に確認が必要でした。


🛠️ 支援・サポート内容

1. 納付記録の確認と、要件を満たす可能性のある初診期間の特定

年金事務所へ行き、相談者の加入記録や未納状況を徹底的に確認。
20歳の誕生日以降、どの期間に納付要件を満たせるか、視認可能な期間を洗い出しました。

2. 初診病院の特定作業

相談者の記憶を丁寧に掘り下げ、
「どんな症状が、いつ、どの医療機関で始まったか」を細かく整理。
結論として、なんとか要件を満たす期間内の病院を特定することに成功しました。

3. 医療記録(カルテ)の有無を確認

当該病院の窓口等に、カルテの保存状況を問い合わせました。
時間が経っているためカルテ廃棄の可能性もある中、実際には記録が残っていたケースだったことが幸いでした。

4. 診断書の取得~申請の準備

カルテがあることで、病院に診断書の作成依頼が可能になりました。
さらに、症状や生活影響の具体内容を診断書に反映するよう図りました。


🏁 結果と得られた支援

相談の結果、障害基礎年金2級が認定されました。

  • 支給額:年額約80万円
     → 約6〜7万円/月を受給し、生活の支えとなります。
  • 遡及額:約430万円(最大5年分)
     → これまで支払われていなかった過去の分をまとめて受け取れます。

相談者は、数十年にわたり続いていた経済的不安から解放され、
**「将来への計画が描けるようになった」**と非常に喜んでいらっしゃいました。


✅ 本事例から学べること

初診日と保険料納付要件は絶対に避けて通れない壁

  • 初診日は「症状が始まったとき+要件を満たす時期」
  • 保険料納付要件がクリアできない期間は、いくら病気が重くても申請対象にならない

記憶と資料をもとに、地道な調査が鍵

  • 初診病院は本人証言だけでなく、カルテ確認とも照合。
  • 思い出せない部分を一つずつ確認し、申請が成立するためのピースを集めます。

精神疾患は症状が波紋することが多く、就労支障が明確に出る

  • 「働けそうで、続かない」状態はご本人も説明しづらいですが、
     診断書や相談記録にその詳細を書くことで、認定に影響します。

💡 同じような悩みを抱える方へ

  • 一人で悩まず、早めに専門家へ相談しましょう。
     年金事務所では法律論中心の助言しか得られず、初診証明など非常に専門的な手続きは難しいことがあります。
  • 記録の整理は重要です。
     年金記録・医療記録・手帳・家族の証言などを整理し、提出可能な証拠を揃えましょう。
  • 粘り強く調査・交渉する姿勢が結果につながります。
     「どうせムリ」と諦めず、資料や第三者の協力を得れば、突破口が見つかります。

📝 最後に

障害年金制度は、働きたくても働けない人の生活を支える大切な制度です。しかし、「初診日」「納付要件」「診断書」など、専門的なハードルがいくつも存在します。

この事例では、

  • 初診日の特定という高い壁に挑み、
  • 保険料の納付状況をきちんと整理し、
  • 医療機関との対応を粘り強く進めた結果、

障害基礎年金2級での認定と遡及支給430万円という、大きな成果を得ることができました。

「制度を知らないから不利になる」のではなく、正しい情報と行動で状況を変えることは可能です
同じようなつらさや不安を抱えていらっしゃる方がいれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

日本障害年金申請サポートセンター
(社会保険労務士法人 日本労働教育総合研究所)

神奈川県の社労士法人で、年間400件以上の障害年金請求に携わっている。
身体障害・精神障害共にサポート可能。

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