「がんと診断されたら障害年金を受給できる?」
「抗がん剤治療中でも障害年金を申請できる?」
「働いていても、がんで障害年金をもらえる?」
がんと診断された方や治療を続けている方の中には、治療費や生活費への不安から障害年金について調べている方も多いのではないでしょうか。
結論からいうと、がんでも障害年金を受給できる可能性があります。
障害年金では、がんのステージや病名だけで判断されるわけではありません。
がんそのものによる身体機能の障害や全身の衰弱、さらに抗がん剤や放射線治療、手術などの治療によって生じた身体機能の低下や強い倦怠感など、がんや治療によって日常生活や仕事にどの程度の制限が生じているかが重要になります。
この記事では、がんと障害年金について、受給条件、1級・2級・3級の目安、治療中の場合、働いている場合、診断書のポイントなどをわかりやすく解説します。
がんでも障害年金は受給できる?
がんは、障害年金の対象となる傷病です。
厚生労働省の障害認定基準では、「悪性新生物による障害」について認定基準が定められています。
がんによる障害は、主に次のようなものが対象となります。
- がんそのものによる全身の衰弱
- がんそのものによる身体機能の障害
- がんの転移による機能障害
- 手術後に残った障害
- 抗がん剤治療による全身衰弱
- 放射線治療などによる機能障害
- がんの治療に伴うその他の障害
つまり、「がんという病気そのもの」だけではなく、「がんや治療によって生じている障害」も含めて判断されるということです。
そのため、がんと診断されたものの、症状が軽く日常生活や仕事への影響がほとんどない場合には、障害年金の対象とならないことがあります。
一方で、治療の影響などによって強い倦怠感が続き、仕事や日常生活に大きな制限が生じている場合には、障害年金を受給できる可能性があります。
がんで障害年金を受給するための条件
がんの場合も、基本的な障害年金の受給要件を満たす必要があります。
主なポイントは次の3つです。
① 初診日を確認する
初診日とは、がんやその症状について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。
初診日に加入していた年金制度によって、請求できる障害年金の種類が変わります。
日本年金機構によると、初診日に国民年金に加入していた場合などは障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の対象となる可能性があります。
がんの場合、最初に「体調が悪い」と感じて受診した病院と、がんの確定診断を受けた病院が異なることもあります。
そのため、どの医療機関を最初に受診したのかを確認することが重要です。
② 障害の状態が認定基準に該当している
障害年金では、がんと診断されているだけでは足りません。
がんや治療によって、
- 日常生活が大きく制限されている
- 長時間の安静が必要
- 身体機能が低下している
- 強い全身倦怠感がある
- 仕事を続けることが難しい
- 職場で大きな配慮が必要
などの状態になっていることが重要です。
③ 保険料納付要件を満たしている
障害年金では、初診日だけでなく、一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。
そのため、がんの症状や治療状況だけでなく、初診日と年金保険料の納付状況も確認する必要があります。
がんの障害年金は何級になる?
がんによる障害年金には、1級・2級・3級の基準があります。
ただし、がんのステージや種類だけで等級が決まるわけではありません。
厚生労働省の認定基準では、治療経過、検査結果、転移の有無、治療効果、日常生活の状況などを総合的に考慮するとされています。
1級の目安
1級は、日常生活を送ることが非常に困難な状態が目安です。
がんによる著しい衰弱や障害によって、身の回りのことができず、常に介助が必要となるような状態などが該当する可能性があります。
障害認定基準では、一般状態区分表の「オ」に該当するような著しい衰弱・障害が1級の例として挙げられています。
2級の目安
2級は、日常生活に著しい制限が生じている状態が目安です。
例えば、
- 強い倦怠感が続いている
- 長時間の安静が必要
- 身の回りのことに介助が必要
- 軽い家事などを行うことが難しい
- 治療のため仕事を継続できない
- がんや治療によって日中の活動が大きく制限されている
などの状態が考えられます。
認定基準では、一般状態区分表の「ウ」または「エ」に該当するような状態が2級の例として示されています。
3級の目安
3級は、障害厚生年金にのみ設けられている等級です。
初診日に厚生年金に加入していた方で、がんによって労働に一定の制限が生じている場合には、3級に該当する可能性があります。
例えば、
- 強い倦怠感によって勤務時間を短縮している
- 抗がん剤治療の影響で仕事を休むことが多い
- 重い仕事ができなくなった
- 職場で仕事内容を制限されている
- 治療と仕事の両立が難しい
といったケースです。
認定基準では、著しい全身倦怠感などによって一般状態区分表の「ア」または「イ」に該当する状態などが3級の例として示されています。
がんの治療中でも障害年金は受給できる?
「まだ治療中だから障害年金は申請できないのでは?」
と考える方もいますが、治療中であることだけを理由に障害年金の対象外になるわけではありません。
がんの障害認定では、治療の状況や症状の経過、治療による身体への影響なども考慮されます。
特に、
- 抗がん剤治療
- 放射線治療
- 手術
- ホルモン療法
- その他のがん治療
などによって強い倦怠感や身体機能の低下が生じている場合には、その影響も重要になります。
障害認定基準でも、がんそのものだけでなく、がんに対する治療の結果として生じた全身衰弱や機能障害も認定の対象とされています。
抗がん剤の副作用でも障害年金の対象になる?
抗がん剤治療によって、
- 強い倦怠感
- 食欲不振
- 吐き気
- 体力低下
- 貧血
- 体重減少
- 手足のしびれ
- 感覚障害
などの症状が生じることがあります。
こうした症状によって日常生活や仕事に大きな制限が生じている場合には、障害年金の認定において考慮される可能性があります。
重要なのは、単に「副作用がある」とするだけではなく、副作用によって具体的に何ができなくなったのかを整理することです。
例えば、
「抗がん剤の副作用で倦怠感がある」
だけでなく、
「治療後は数日間ほとんど横になっている」
「買い物に一人で行くことが難しい」
「勤務時間を短縮している」
など、生活への影響を具体的に整理することが大切です。
がんで働いていても障害年金は受給できる?
働いているからといって、障害年金を受給できないわけではありません。
がんの障害認定では、単純に「仕事をしているか、していないか」だけで判断するのではなく、仕事内容や勤務状況、治療状況などを総合的に考慮します。
例えば、
- 短時間勤務にしている
- 重い仕事を免除されている
- 通院のため頻繁に休んでいる
- 上司や同僚からサポートを受けている
- 治療の副作用で勤務に制限がある
- 治療前と比べて仕事量が大幅に減っている
といった事情がある場合には、それらも重要な判断材料になります。
したがって、
「仕事をしている=障害年金はもらえない」
とは限りません。
がんの障害年金で重要な「日常生活の状況」
がんで障害年金を申請する場合、日常生活の状況を具体的に整理することが重要です。
例えば、
食事
- 食事を自分で準備できるか
- 食欲があるか
- 食事量が減っていないか
身の回りのこと
- 入浴や着替えができるか
- 掃除や洗濯ができるか
- 家族の援助が必要か
外出
- 一人で外出できるか
- 通院以外の外出ができるか
- 長距離の移動が難しくないか
仕事
- 何時間勤務できるか
- 仕事量は制限されているか
- 休職や欠勤が増えていないか
- 職場から配慮を受けているか
などです。
「がんと診断されている」という事実だけではなく、現在の生活にどの程度の影響が出ているのかを具体的に伝えることが重要です。
がんの障害年金では診断書が重要
障害年金の申請では、医師が作成する診断書が重要な書類となります。
がんの場合には、
- がんの種類
- 病状
- 治療内容
- 治療期間
- 転移の有無
- 治療による副作用
- 全身状態
- 身体機能への影響
- 日常生活への影響
などが重要になります。
特に、治療による倦怠感や体力低下などは、外見だけでは分かりにくいことがあります。
そのため、実際にどの程度の症状があり、生活にどのような制限が生じているのかを主治医に正確に伝えることが大切です。
がんの障害年金申請で注意したいポイント
「がんのステージ」だけで判断しない
「ステージ4だから必ず2級になる」
「初期のがんだから障害年金は無理」
というように、ステージだけで判断することはできません。
障害年金では、検査結果や治療経過だけでなく、実際の日常生活や仕事への影響も含めて総合的に判断されます。
治療による影響も具体的に整理する
抗がん剤や放射線治療などによる副作用がある場合は、
- どのような症状があるのか
- いつ症状が出るのか
- どのくらい続くのか
- 日常生活にどう影響するのか
- 仕事にどう影響するのか
を具体的に整理しましょう。
「働いているから無理」と決めつけない
がんの治療を続けながら働いている方もいます。
しかし、短時間勤務や仕事内容の制限、職場からの配慮などによって何とか仕事を続けている場合もあります。
そのため、就労の有無だけで判断せず、どのような状態で仕事を続けているのかを確認することが大切です。
がんで障害年金を申請する流れ
一般的には、次のような流れで申請を進めます。
STEP1 初診日を確認する
がんやその症状について初めて医療機関を受診した日を確認します。
STEP2 年金加入状況・保険料納付要件を確認する
初診日時点の年金加入状況と保険料納付要件を確認します。
STEP3 障害状態を整理する
がんそのものによる症状だけでなく、治療による副作用や日常生活・仕事への影響を整理します。
STEP4 診断書を依頼する
主治医に障害年金用の診断書を作成してもらいます。
STEP5 必要書類を準備する
診断書など必要な書類をそろえます。
STEP6 障害年金を請求する
必要書類を提出して請求手続きを行います。
日本年金機構では、障害年金の受給要件や請求時期、障害認定基準などについて案内しています。
まとめ|がんでも障害年金を受給できる可能性があります
がんは障害年金の対象となる傷病の一つです。
特に、
- がんによって強い全身衰弱がある
- 身体機能に障害が残っている
- 抗がん剤などの治療による副作用が強い
- 日常生活に大きな制限がある
- 治療によって仕事が大きく制限されている
といった場合には、障害年金を受給できる可能性があります。
一方で、「がんと診断された」というだけで自動的に障害年金が受給できるわけではありません。
障害年金では、がんの種類やステージだけではなく、治療の経過、検査結果、転移の有無、治療効果、全身状態、日常生活や仕事への影響などを総合的に判断します。
「自分の場合は障害年金の対象になるのか分からない」という場合は、年金事務所への相談に加えて、障害年金に詳しい社会保険労務士へ相談することも一つの方法です。


コメント