ADHDで障害年金は受給できる?受給条件・等級の目安・申請時の注意点を解説

「ADHDと診断されたけれど、障害年金は受給できる?」

「仕事をしていると障害年金はもらえない?」

「ADHDでは何級になるの?」

ADHD(注意欠如・多動症)の特性によって、仕事や日常生活に大きな支障が生じている場合、このような疑問を持つ方も少なくありません。

結論からいうと、ADHDでも障害年金を受給できる可能性があります。

障害年金は、病名だけで受給できるかどうかが決まる制度ではありません。ADHDによって、日常生活や社会生活、仕事などにどの程度の制限が生じているのかを踏まえて判断されます。

この記事では、ADHDと障害年金について、受給条件、等級の目安、働いている場合の考え方、診断書のポイント、申請時の注意点までわかりやすく解説します。


目次

ADHDでも障害年金は受給できる?

ADHDは、障害年金の対象となり得る「発達障害」に含まれています。

厚生労働省の障害認定基準でも、発達障害の例として「注意欠陥多動性障害」が明記されています。発達障害については、知能指数だけではなく、社会生活やコミュニケーション、日常生活への影響などを考慮して認定されます。

そのため、

  • 忘れ物やミスが非常に多い
  • スケジュール管理ができない
  • 金銭管理が難しい
  • 片付けや家事ができない
  • 人とのコミュニケーションでトラブルが多い
  • 指示を理解して行動することが難しい
  • 仕事を継続することが難しい
  • 職場で頻繁にサポートを受けている

など、ADHDの特性によって日常生活や社会生活に大きな制限が生じている場合には、障害年金の対象となる可能性があります。

ただし、「ADHDと診断された=障害年金を受給できる」というわけではありません。

実際の症状や生活状況、必要な援助の程度などを総合的に判断することが重要です。


ADHDの障害年金で重要なのは「診断名」だけではない

障害年金では、診断名そのものよりも、その障害によって生活にどのような制限が生じているかが重要になります。

特にADHDの場合、外見からは障害の程度が分かりにくかったり、本人が努力することで一定程度の生活や仕事ができたりすることがあります。

そのため、

「会社に行けているから障害年金は無理」

「一人暮らしをしているから対象にならない」

「知的障害がないから障害年金は受けられない」

と単純に判断することはできません。

発達障害の認定では、知能指数が高い場合であっても、社会行動やコミュニケーション能力などによって日常生活に著しい制限が生じている場合には、その点を踏まえて判断されます。


ADHDで障害年金を受給するための条件

ADHDで障害年金を請求する場合も、基本的な障害年金の受給要件を満たす必要があります。

主に確認するポイントは次の3つです。

① 初診日に年金制度の要件を満たしている

「初診日」とは、障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。

初診日にどの年金制度に加入していたかによって、請求できる障害年金の種類が変わります。

日本年金機構によると、初診日に国民年金に加入していた場合などは障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の対象となる可能性があります。

ADHDの場合、幼少期から特性があったとしても、必ずしも幼少期の時点が初診日になるとは限りません。

特に、知的障害を伴わない発達障害については、症状によって初めて医療機関を受診した日が20歳以降であれば、その受診日が初診日となる場合があります。


② 障害の状態が一定の基準に該当している

障害年金では、障害認定日に一定以上の障害状態にあることが必要です。

原則として、障害認定日は初診日から1年6か月を経過した日です。

ただし、その後に症状が悪化した場合には、一定の条件のもとで事後重症による請求ができる場合があります。


③ 保険料の納付要件を満たしている

障害年金では、初診日だけでなく、一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。

そのため、ADHDの症状や診断書だけではなく、初診日と保険料の納付状況も重要な確認ポイントです。


ADHDでは何級になる?1級・2級・3級の目安

「ADHDなら何級になるのか?」という点も気になるところです。

しかし、ADHDだから自動的に2級になるというような決まりはありません。

障害年金の等級は、実際の日常生活や社会生活への影響を踏まえて判断されます。

1級のイメージ

1級は、日常生活において常時の援助が必要となるなど、非常に重い状態が目安となります。

例えば、ADHDの特性によって、

  • 身の回りのことを自力で行うことが非常に難しい
  • 金銭管理や服薬管理などを一人で行えない
  • 日常生活の多くの場面で継続的な援助が必要
  • 社会生活への適応が著しく困難

といった状態が考えられます。

ただし、実際の認定は個々の症状や生活状況を総合的に判断して行われます。


2級のイメージ

2級は、日常生活に著しい制限があり、社会生活を送ることが難しい状態が一つの目安となります。

ADHDの場合、

  • 日常生活のスケジュール管理が難しい
  • 金銭管理に継続的な援助が必要
  • 家事を一人で適切に行うことが難しい
  • 忘れ物や確認不足が非常に多い
  • 対人関係で頻繁にトラブルが発生する
  • 仕事をしていても周囲から継続的なサポートを受けている
  • 一人で社会生活を安定して維持することが難しい

など、複数の場面で大きな制限が生じている場合には、2級に該当する可能性があります。


3級のイメージ

3級は障害厚生年金にのみ設けられている等級です。

つまり、初診日に厚生年金に加入していた場合に、3級の対象となる可能性があります。

ADHDによって、

  • 仕事の内容が大幅に制限されている
  • ミスや集中困難などによって通常の勤務が難しい
  • 職場から特別な配慮や援助を受けている
  • 他の人と同じように働くことが難しい

など、労働に一定の制限が生じている場合には、3級に該当する可能性があります。

一方、初診日に国民年金に加入していた場合などの障害基礎年金には3級はありません。


ADHDで「働いている」場合でも障害年金は受給できる?

「仕事をしているから障害年金はもらえないのでは?」

と考える方もいますが、働いていることだけを理由に障害年金が不支給になるわけではありません。

障害年金では、仕事をしているかどうかだけではなく、

  • 仕事内容
  • 勤務時間
  • 職場で受けている配慮
  • 上司や同僚からのサポート
  • ミスの頻度
  • 指示を理解して実行できるか
  • 一人で仕事を完結できるか
  • 欠勤や遅刻の状況
  • 就労を継続するためにどのような援助が必要か

などを含めて、障害の状態を考えることが重要です。

特にADHDの場合、職場からの配慮によって何とか勤務を継続できているケースもあります。

そのため、

「働いている」という事実だけで判断するのではなく、「どのような支援があって働けているのか」を具体的に整理することが大切です。


ADHDの障害年金では「日常生活」の状況が重要

ADHDの障害年金申請では、仕事の状況だけではなく、日常生活についても具体的に整理しておきましょう。

例えば、次のような項目です。

食事

  • 食事を自分で準備できるか
  • 食事を忘れてしまうことがあるか
  • 食生活が乱れていないか

清潔保持

  • 入浴や着替えを適切に行えるか
  • 身だしなみを整えられるか

金銭管理

  • お金を計画的に使えるか
  • 衝動買いが多くないか
  • 支払いを忘れることがないか

買い物

  • 必要なものを整理して購入できるか
  • 衝動的に購入してしまうことがあるか

通院・服薬

  • 一人で通院できるか
  • 薬を決められたとおりに服用できるか
  • 服薬を忘れることがあるか

コミュニケーション

  • 相手の話を最後まで聞けるか
  • 話を遮ってしまうことがあるか
  • 対人関係のトラブルが頻繁にあるか

社会生活

  • 約束や予定を守れるか
  • スケジュール管理ができるか
  • 公共の場で適切な行動ができるか

このような内容を具体的に整理しておくことが、申請を検討するうえで重要になります。


ADHDの障害年金で診断書が重要な理由

障害年金の申請では、医師が作成する診断書が重要な書類の一つです。

ADHDの場合、単に「ADHD」という診断名が記載されているだけではなく、症状によって日常生活や社会生活にどのような制限が生じているのかが伝わることが重要です。

例えば、

「集中力が低い」

というだけではなく、

「仕事中に確認を繰り返してもミスが発生し、上司によるチェックが必要」

「予定を自分で管理することが難しく、家族による声掛けが必要」

など、実際の生活場面でどのような支援が必要なのかが分かる情報が重要になります。


ADHDの障害年金では「病歴・就労状況等申立書」も重要

障害年金では、診断書だけでなく「病歴・就労状況等申立書」も提出することがあります。

この書類では、

  • これまでの症状
  • 通院歴
  • 日常生活の状況
  • 学校生活
  • 就労状況
  • 職場での配慮
  • 症状によって困っていること

などを整理します。

ADHDは、子どもの頃から「忘れ物が多い」「落ち着きがない」「集中できない」などの特性が見られることがあります。

そのため、現在の状況だけでなく、これまでどのような困難が続いてきたのかを時系列で整理することも大切です。


ADHDで障害年金が認められにくくなるケース

ADHDと診断されていても、必ず障害年金を受給できるわけではありません。

例えば、

  • 日常生活をほぼ問題なく送れている
  • 周囲からの援助がほとんど必要ない
  • 就労上の大きな制限がない
  • 症状による生活上の支障が軽い
  • 診断書と実際の生活状況に大きな違いがある
  • 障害年金の受給要件を満たしていない

といった場合には、認定が難しくなる可能性があります。

特に注意したいのは、「診断名があるから申請すれば受給できる」と考えないことです。

障害年金は、障害の程度や生活への影響などを踏まえて総合的に判断される制度です。厚生労働省も、障害年金の認定は障害認定基準に基づいて行うとしています。


ADHDと他の精神疾患を併発している場合は?

ADHDの方の中には、うつ病や不安障害など、他の精神疾患を併発しているケースもあります。

発達障害と他の精神疾患が併存している場合、単純にそれぞれの障害を別々に評価して等級を足し合わせるという考え方ではなく、それぞれの症状を含めて総合的に判断することになります。

そのため、

「ADHDだけでは難しいかもしれない」

と自己判断するのではなく、現在の診断名や症状、生活への影響を整理して確認することが大切です。


ADHDの障害年金を申請する流れ

一般的な申請の流れは次のようになります。

STEP1:初診日を確認する

最初に、ADHDの症状について初めて医療機関を受診した日を確認します。

初診日は、どの障害年金を請求できるか、保険料納付要件を満たしているかなどにも関係するため、非常に重要です。

STEP2:保険料納付要件を確認する

初診日時点の年金加入状況と、保険料の納付状況を確認します。

STEP3:診断書を依頼する

現在の主治医に障害年金の診断書を作成してもらいます。

STEP4:病歴・就労状況等申立書を作成する

これまでの症状や日常生活、仕事の状況などを具体的に整理します。

STEP5:必要書類をそろえる

診断書や申立書など、必要な書類を準備します。

STEP6:年金事務所などへ請求する

必要書類をそろえて障害年金の請求を行います。

日本年金機構では、障害年金について、制度や請求手続き、障害認定基準などの情報を案内しています。


ADHDで障害年金を申請するときの3つの注意点

① 「できること」だけでなく「援助が必要なこと」も整理する

障害年金の申請では、

「一人暮らしができている」

「仕事に行けている」

といった事実だけでなく、その生活を維持するためにどのような援助や工夫が必要なのかを整理することが重要です。


② 仕事をしている場合は職場での配慮を具体的にする

例えば、

「働いています」

だけではなく、

「指示を一度に複数受けると混乱するため、上司から一つずつ指示を出してもらっている」

「ミスが多いため、提出前に上司のチェックを受けている」

「忘れ物防止のため、職場から特別な配慮を受けている」

など、具体的な状況を整理しておきましょう。


③ 自分だけで判断しない

ADHDは症状の現れ方に個人差が大きく、同じ診断名でも障害年金の認定結果が同じになるとは限りません。

そのため、

「ADHDだから受給できない」

「仕事をしているから無理」

といった自己判断は避け、初診日や日常生活、就労状況などを整理したうえで申請を検討することが大切です。


ADHDで障害年金を受給できるか迷ったら

ADHDは障害年金の対象となり得る発達障害の一つです。

ただし、受給できるかどうかは診断名だけで決まるものではありません。

「ADHDによって日常生活や仕事にどの程度の支障が生じているのか」

「その生活を維持するために、どの程度の援助や配慮が必要なのか」

という点が重要になります。

特に、働いている場合でも、職場でどのような配慮を受けているのか、どのような仕事上の制限があるのかによって状況は異なります。

障害年金の申請を検討しているものの、自分の場合に受給の可能性があるのか分からない場合には、年金事務所への相談に加えて、障害年金に詳しい社会保険労務士に相談することも一つの方法です。


まとめ|ADHDでも障害年金を受給できる可能性があります

ADHDは、障害年金の対象となり得る発達障害です。

ただし、

  • ADHDと診断されていること
  • 日常生活にどの程度の制限があるか
  • 社会生活にどの程度の支障があるか
  • 仕事をするうえでどのような制限や配慮があるか
  • 初診日や保険料納付要件を満たしているか

などを総合的に確認する必要があります。

「ADHDだから障害年金は無理」「働いているから受給できない」と決めつけるのではなく、現在の生活状況を具体的に整理することが、障害年金を検討する第一歩です。

ADHDによる生活上の困難が大きく、障害年金の申請を考えている場合は、専門家への相談も選択肢の一つとして検討してみるとよいでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

障害年金ステーション事務局です。
当サイトは障害年金に強い社労士監修の元、様々な事例を紹介させていただくと共に、障害年金のことでお悩みの方やそのご家族と社労士の先生方との橋渡しをさせていただいております。

障害年金は、国民の皆様が当然受け取るべき権利です。
ぜひ障害年金ステーションを通じて、お悩みの解決ができれば幸いです。

コメント

コメントする

目次