「障害年金を申請したいけれど、障害認定日の時点ではそれほど症状が重くなかった」
「その後、症状が悪化した場合でも障害年金は請求できる?」
「事後重症請求は何歳までに申請すればいい?」
障害年金について調べていると、「事後重症請求」という言葉を目にすることがあります。
事後重症請求とは、障害認定日の時点では障害年金の等級に該当しなかったものの、その後に症状が悪化し、障害年金の対象となる障害状態になった場合に行う請求です。
日本年金機構も、障害認定日に法令で定める障害状態に該当しなかった方が、その後症状が悪化して障害状態になった場合、事後重症による請求ができると案内しています。
ただし、事後重症請求には重要な請求期限があります。
この記事では、事後重症請求の仕組みや請求期限、認定日請求との違い、請求が遅れた場合の注意点などをわかりやすく解説します。
事後重症請求とは?
事後重症請求とは、簡単にいうと、
「障害認定日の時点では障害年金を受けられる状態ではなかったものの、その後、症状が悪化して障害年金の等級に該当した場合に行う請求」
です。
障害年金では、原則として初診日から1年6か月を経過した日が「障害認定日」となります。
通常は、この障害認定日の時点で障害年金の認定基準に該当するかどうかが確認されます。
しかし、
障害認定日の時点では症状が軽かった
↓
その後、病状が悪化した
↓
現在は障害年金の等級に該当する状態になった
という場合があります。
このようなケースで利用されるのが事後重症請求です。
日本年金機構では、障害認定日に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化して障害状態になったときは、請求日の翌月分から障害年金を受け取れるとしています。
障害認定日請求との違い
事後重症請求を理解するためには、「障害認定日による請求」との違いを知っておくことが重要です。
障害認定日による請求
障害認定日の時点で、すでに障害年金の等級に該当している場合に行う請求です。
認定されれば、原則として障害認定日の翌月分から障害年金が支給されます。
障害認定日から時間が経っていても請求することは可能ですが、過去の年金には時効があるため、遡って受け取れるのは原則として5年分が限度です。
事後重症請求
一方、障害認定日の時点では障害年金の等級に該当していなかったものの、その後症状が悪化して障害状態に該当した場合の請求です。
この場合、原則として請求日の翌月分から障害年金が支給されます。
つまり、
障害認定日の時点ですでに該当
→ 障害認定日による請求
障害認定日の時点では該当していなかったが、その後悪化
→ 事後重症請求
という違いがあります。
事後重症請求は何歳までできる?
事後重症請求で最も注意したいのが、請求期限です。
事後重症請求は、原則として65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります。
「65歳になるまで」と考えるとわかりにくいかもしれません。
たとえば、65歳の誕生日が10月10日なら、
10月8日まで
に請求する必要があります。
65歳の誕生日を迎えてから事後重症請求をすることはできません。
そのため、65歳が近い方は特に注意が必要です。
事後重症請求は「症状が悪化した日」に請求するのではない
ここも誤解されやすいポイントです。
事後重症請求では、症状が悪化した日から自動的に障害年金が支給されるわけではありません。
請求日の翌月分から支給されるのが原則です。
例えば、8月に事後重症請求をした場合、認定されれば原則として9月分からの支給となります。
そのため、
「症状が重くなってから、しばらく様子を見てから申請しよう」
と考えて請求を先延ばしにすると、その分だけ年金を受け取れる時期も遅くなります。
日本年金機構も、請求が遅くなると年金の受給開始時期も遅くなるため、注意が必要としています。
事後重症請求ができる主な条件
事後重症請求を検討する場合、主に次の点を確認する必要があります。
① 障害認定日の時点では障害等級に該当していない
まず、障害認定日の時点では、障害年金の認定基準に該当する障害状態ではなかったことが前提となります。
例えば、
- 障害認定日の時点では比較的軽症だった
- 日常生活への支障がそれほど大きくなかった
- 当時は就労できていた
- その後に症状が悪化した
などのケースです。
ただし、単に「当時は症状が軽かった」というだけではなく、障害認定日時点の診断書などを含めて判断する必要があります。
② その後、障害年金の等級に該当する状態になった
次に、現在の障害状態が障害年金の認定基準に該当している必要があります。
つまり、
障害認定日:該当しない
↓
現在:該当する
という状態です。
現在の障害状態については、請求時の診断書などによって確認されます。
③ 65歳の誕生日の前々日までに請求する
そして非常に重要なのが請求期限です。
事後重症請求は、原則として65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります。
「65歳になる直前まで時間がある」と考えていると、診断書の作成や必要書類の準備が間に合わなくなる可能性があります。
65歳が近い方は、早めに準備を始めることが大切です。
事後重症請求では診断書が重要
事後重症請求では、請求時点の障害状態がわかる診断書が重要になります。
障害年金の診断書では、単に病名を記載するだけではなく、現在の障害状態や日常生活への影響などを適切に記載してもらう必要があります。
特に精神疾患の場合には、
- 食事
- 清潔保持
- 金銭管理
- 通院・服薬
- 対人関係
- 外出
- 社会生活
- 就労状況
など、日常生活にどのような制限があるのかを具体的に確認することが重要です。
身体の障害についても、
- 歩行
- 立ち上がり
- 着替え
- 食事
- 排泄
- 階段昇降
- 通勤
- 仕事への影響
など、障害によって日常生活や仕事にどのような制限が生じているのかを整理しておきましょう。
「病名が重くなった」だけでは事後重症請求できない?
ここも重要なポイントです。
事後重症請求では、単に病名が変わったり、検査数値が悪化したりしただけで自動的に障害年金が受給できるわけではありません。
重要なのは、障害年金の認定基準に該当する障害状態になったかどうかです。
例えば、病気そのものが進行していても、日常生活や仕事への影響が障害年金の認定基準に該当しない場合には、受給できない可能性があります。
そのため、
「病気が悪化した=必ず障害年金を受給できる」
とは限りません。
事後重症請求は過去の分までさかのぼってもらえる?
原則として、事後重症請求では請求日の翌月分から障害年金が支給されます。
そのため、
「2年前から症状が悪化していたから、2年前までさかのぼって障害年金を受け取りたい」
ということは、通常の事後重症請求ではできません。
ただし、実は「障害認定日の時点でも障害等級に該当していたのではないか」という場合には、事後重症請求だけではなく、障害認定日による請求ができないかを検討する必要があります。
日本年金機構の資料でも、障害認定日時点で受給権が発生しない場合に事後重症請求を行う仕組みとされています。
そのため、過去の状態を確認せずに、
「認定日は軽かったから事後重症で申請する」
と決めつけないことが大切です。
障害認定日請求ができるのに事後重症請求だけにするのは注意
障害年金の請求では、障害認定日の時点でも障害等級に該当していた可能性があるかを確認することが重要です。
もし障害認定日の時点で等級に該当していたのであれば、障害認定日による請求を検討できる可能性があります。
障害認定日による請求であれば、認定されれば障害認定日の翌月分から支給される可能性があります。
一方、事後重症請求では請求日の翌月分からの支給が原則です。
そのため、
「過去の状態はどうだったのか」
を確認したうえで、どの請求方法を選択するのか検討することが重要です。
65歳が近い方は特に注意
事後重症請求を検討している方の中には、
「もうすぐ65歳だけれど、申請できる?」
という方もいます。
事後重症請求には65歳の誕生日の前々日までという期限があります。
そのため、65歳が近い場合には、
初診日の確認
↓
保険料納付要件の確認
↓
障害認定日の確認
↓
現在の障害状態の確認
↓
診断書の準備
↓
請求書の提出
という手続きを急いで進める必要があります。
特に診断書の作成には医療機関の事情によって時間がかかることもあります。
「65歳の誕生日直前になってから準備する」のではなく、早めに専門家や年金事務所などへ相談することをおすすめします。
60歳から65歳未満の方も対象になる場合がある
60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間に初診日がある場合でも、一定の条件を満たせば障害基礎年金の対象となる場合があります。
日本年金機構も、60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる期間に初診日があり、保険料納付要件などを満たしている場合、障害基礎年金の対象となる場合があると案内しています。
ただし、事後重症請求の場合は、やはり65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。
事後重症請求で注意したい5つのポイント
① 65歳の誕生日の前々日が期限
事後重症請求には期限があります。
「65歳になってから申請すればいい」と考えないようにしましょう。
② 請求が遅れると支給開始も遅れる
事後重症請求は、原則として請求日の翌月分から支給されます。
請求を先延ばしにすると、その分だけ受給開始も遅くなります。
③ 障害認定日時点の状態も確認する
現在は重症でも、障害認定日の時点ではどうだったのかを確認することが重要です。
場合によっては、事後重症請求ではなく障害認定日による請求を検討できる可能性があります。
④ 診断書は現在の状態を正確に反映する
事後重症請求では請求時点の障害状態が重要です。
日常生活や仕事への影響について、主治医に正確に伝えるようにしましょう。
⑤ 「病名」だけで判断しない
障害年金は病名だけで決まるものではありません。
障害年金の認定基準に照らして、現在どの程度の障害状態なのかを確認することが大切です。
事後重症請求の流れ
最後に、事後重症請求のおおまかな流れを確認しておきましょう。
STEP1 初診日を確認する
まず、障害の原因となった傷病について、初めて医師の診療を受けた日を確認します。
STEP2 保険料納付要件を確認する
初診日の前日における保険料の納付状況を確認します。
STEP3 障害認定日の状態を確認する
障害認定日の時点で障害等級に該当していなかったかを確認します。
STEP4 現在の障害状態を確認する
現在、障害年金の認定基準に該当する状態なのかを確認します。
STEP5 診断書を作成してもらう
請求時点の障害状態がわかる診断書を医師に作成してもらいます。
STEP6 必要書類をそろえて請求する
年金請求書や診断書など、必要な書類を準備して請求します。
そして、65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出することが重要です。
まとめ|事後重症請求は請求期限に注意
事後重症請求とは、障害認定日の時点では障害年金の等級に該当しなかったものの、その後に症状が悪化して障害状態に該当した場合に行う請求です。
事後重症請求のポイントをまとめると、
- 障害認定日の時点では障害等級に該当していない
- その後、症状が悪化して障害等級に該当する
- 原則として請求日の翌月分から支給される
- 65歳の誕生日の前々日までに請求する必要がある
- 請求が遅れると、その分だけ受給開始も遅くなる
- 障害認定日の時点でも該当していた可能性がないか確認することが重要
という点が挙げられます。
特に注意したいのが、「65歳の誕生日の前々日まで」という期限です。
「まだ65歳になっていないから大丈夫」と思っていても、診断書の作成や書類の準備には時間がかかる場合があります。
また、障害認定日の時点でも障害等級に該当していた場合には、事後重症請求ではなく、障害認定日による請求を検討できる可能性があります。
「自分は事後重症請求になるのかわからない」
「障害認定日のときは軽かったけれど、今はかなり悪化している」
「65歳が近いけれど申請できる?」
「過去の分も請求できるのか知りたい」
といった場合は、初診日や障害認定日、現在の障害状態などを整理したうえで、障害年金に詳しい社会保険労務士などの専門家に相談することも一つの方法です。
当サイトでは、障害年金の申請や請求に詳しい社会保険労務士事務所をご紹介しています。
事後重症請求を検討している方は、請求期限を確認し、できるだけ早めに準備を始めましょう。


コメント