「障害年金を申請したいけれど、初診日がいつなのかわからない」
「最初に受診した病院が閉院していて、初診日の証明ができない」
「転院を繰り返しているため、どの病院を初診日として考えればよいのかわからない」
障害年金の申請を検討している方の中には、このような悩みを抱えている方も少なくありません。
障害年金の請求では、「初診日」が非常に重要なポイントになります。
初診日は、単に「最初に病名を診断された日」という意味ではありません。障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。(nenkin.go.jp
そして、初診日によって、
- 障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを請求するのか
- 保険料の納付要件を満たしているか
- 障害認定日がいつになるのか
- 障害年金を請求できる可能性があるのか
などが変わってきます。
この記事では、障害年金の初診日について、初診日の意味、重要な理由、具体的な調べ方、証明できない場合の対処法まで、わかりやすく解説します。
障害年金の「初診日」とは?
障害年金における初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
日本年金機構では、同じ病気やけがで医療機関を転院した場合、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日になるとしています。(nenkin.go.jp
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
例:うつ病で複数の病院を受診している場合
- 2019年4月 Aクリニックを初めて受診
- 2020年6月 B病院へ転院
- 2022年1月 現在のC病院を受診
- 2026年 障害年金を申請
この場合、原則として2019年4月が初診日となります。
現在通院しているC病院が最初に受診した医療機関ではないからです。
そのため、「今の主治医に診てもらった日=初診日」とは限りません。
なぜ障害年金では初診日が重要なの?
初診日は、障害年金の申請において非常に重要です。
大きく分けると、次の4つの理由があります。
① 障害基礎年金か障害厚生年金かが決まる
初診日にどの年金制度に加入していたかによって、請求できる障害年金の種類が変わります。
例えば、初診日に厚生年金に加入していた場合には、障害厚生年金を請求できる可能性があります。
一方、国民年金に加入している期間などに初診日がある場合には、障害基礎年金の対象となることがあります。(nenkin.go.jp
障害厚生年金には1級・2級だけでなく3級もあるため、初診日によって請求できる年金の種類が変わることは非常に重要です。
② 保険料の納付要件に関係する
障害年金には、原則として保険料の納付要件があります。
そして、この納付要件を確認する際にも初診日が基準になります。
そのため、
「初診日がいつなのか」
を確認しなければ、保険料の納付要件を満たしているかどうかも正確に判断できません。
つまり、初診日は単に申請書類に記載するだけの日付ではなく、障害年金を請求できるかどうかを判断するうえで重要な基準なのです。
③ 障害認定日が決まる
障害年金では、原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となります。
そのため、初診日が変わると障害認定日も変わります。
例えば、
- 初診日:2023年4月1日
- 障害認定日:2024年10月1日
というように、原則として初診日から1年6か月後が障害認定日の基準になります。
ただし、傷病によっては1年6か月を待たずに症状が固定した場合など、例外があります。
④ 受給できる可能性や請求方法にも影響する
初診日は、障害年金を請求するうえでの基本的な起点になります。
例えば、初診日から長期間が経過している場合には、
- 障害認定日時点の診断書を用意できるか
- 初診日を証明できる資料が残っているか
- 現在の障害状態で事後重症請求を検討するのか
など、請求方法を慎重に検討する必要があります。
「初診日=病名が確定した日」ではない
ここは障害年金の初診日で特に間違えやすいポイントです。
初診日は、必ずしも病名が確定した日ではありません。
例えば、
- 最初は「不眠」で受診した
- 後からうつ病と診断された
- さらに別の病院で双極性障害と診断された
という場合でも、障害年金上の初診日については、病気の関連性などを踏まえて判断する必要があります。
また、
- 頭痛で受診した
- 後に脳腫瘍が判明した
- 別の病院で治療を開始した
といったケースでも、最初の受診が障害の原因となった傷病と医学的に関連しているかどうかなどを確認する必要があります。
「正式な病名を診断された日」だけを見て初診日を判断するのは危険です。
初診日を調べる方法
初診日を確認する場合には、まず過去の受診歴を整理してみましょう。
① 現在の病院に確認する
現在通院している病院に、
「以前、別の病院を受診していませんでしたか?」
と確認してみましょう。
紹介状や診療情報提供書などから、過去の医療機関が判明する場合があります。
② お薬手帳を確認する
お薬手帳には、医療機関名や処方された薬などが記録されている場合があります。
過去の受診歴を確認する手がかりの一つになります。
③ 診察券や領収書を確認する
昔の診察券や医療費の領収書が残っていれば、医療機関や受診時期を確認できる可能性があります。
④ 紹介状を確認する
前の医療機関から現在の病院へ紹介されている場合、紹介状や診療情報提供書に以前の受診状況が記載されていることがあります。
⑤ 健康保険の給付記録などを確認する
医療保険の給付記録などが、初診日を確認するための資料として利用できる場合があります。
日本年金機構も、初診日の確認に関連する資料として、健康保険の給付記録、診断書、紹介状、診察券、領収書、お薬手帳などを例示しています。(nenkin.go.jp
初診日の証明には「受診状況等証明書」が使われる
現在の医療機関と初診時の医療機関が異なる場合、初診日の確認のために、初診時の医療機関から**「受診状況等証明書」**を取得することがあります。
日本年金機構では、初診時の医療機関と現在の診断書を作成する医療機関が異なる場合、初診日を確認するため、「受診状況等証明書」の提出を求める場合があるとしています。(nenkin.go.jp
例えば、
A病院 → B病院 → C病院(現在)
という流れで通院している場合、A病院が初診時の医療機関となります。
A病院から受診状況等証明書を取得し、初診日を確認することになります。
初診日の証明ができない場合はどうする?
障害年金の申請を考えている方の中には、
「最初の病院が閉院してしまった」
「カルテが残っていないと言われた」
「昔すぎて受診記録がない」
という方もいます。
この場合でも、初診日の証明ができない=必ず障害年金を申請できない、というわけではありません。
日本年金機構には、初診時の医療機関から受診状況等証明書を取得できない場合に使用する「受診状況等証明書が添付できない申立書」があります。(nenkin.go.jp
そのうえで、初診日を確認できる資料を準備していくことになります。
初診日の証明に使える可能性がある資料
初診時の医療機関から証明書を取得できない場合には、状況に応じて次のような資料が参考になる場合があります。
- 診察券
- 医療費の領収書
- お薬手帳
- 紹介状
- 診療情報提供書
- 健康保険の給付記録
- 診断書の写し
- 健康診断の記録
- 障害者手帳の申請時の診断書
- 交通事故証明書
- 医療情報サマリー
- 電子カルテ等の記録
- 第三者による証明
日本年金機構の資料でも、これらの資料が初診日を確認するための参考資料として挙げられています。(nenkin.go.jp
ただし、資料があるだけで必ず初診日が認められるとは限りません。
資料の内容や初診日の状況などを踏まえて判断されるため、どの資料をどのように組み合わせるかが重要になります。
第三者証明によって初診日を確認できる場合もある
初診時の医療機関から証明書を取得できない場合には、一定の条件のもとで第三者による証明を利用できる場合があります。
日本年金機構では、「初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)」の様式を用意しています。(nenkin.go.jp
例えば、初診日の頃の受診状況を実際に見聞きしていた知人などがいる場合、その方による証明が参考となるケースがあります。
また、日本年金機構の案内では、20歳以降に初診日があるケースについて、第三者証明と参考資料を組み合わせて初診日を確認する方法などが示されています。(nenkin.go.jp
ただし、第三者証明には一定の要件があります。
「家族に書いてもらえばよい」という単純なものではありませんので、制度を確認したうえで準備することが重要です。
初診日が「一定の期間内」としかわからない場合
長い年月が経過している場合、
「2010年頃に受診したことはわかるけれど、正確な日付まではわからない」
というケースもあります。
このような場合でも、一定の資料によって初診日が一定の期間内にあることを確認でき、その期間を通じて保険料納付要件を満たしている場合など、一定の条件のもとで本人が申し立てた初診日を確認できる仕組みがあります。(nenkin.go.jp
ただし、具体的な取扱いはケースによって異なります。
初診日が変わると何が変わる?
初診日が変わると、障害年金の申請に大きな影響が出ることがあります。
例えば、
初診日が厚生年金加入中の場合
障害厚生年金を請求できる可能性があります。
初診日が国民年金加入中の場合
障害基礎年金を請求することになります。
このように、初診日の違いによって請求できる年金の種類が変わる可能性があります。
また、初診日は保険料納付要件の確認にも関係します。
そのため、
「初診日が1日違うだけだから大した問題ではない」
とは限りません。
場合によっては、年金の種類や受給できる可能性に関わる重要な問題となります。
初診日が複雑になりやすいケース
次のようなケースでは、初診日の判断が難しくなることがあります。
転院を何度も繰り返している
複数の病院を受診している場合、最初の受診がどこだったのかを確認する必要があります。
病名が途中で変わっている
最初は別の病名で診断され、その後に現在の病名がついた場合には、傷病の関連性などを確認する必要があります。
最初は別の症状で受診している
「頭痛」「不眠」「腰痛」などの症状で受診し、後になって別の病気が判明するケースでは、初診日の判断が複雑になることがあります。
最初の病院が閉院している
初診時の医療機関が閉院していると、受診状況等証明書を取得できない可能性があります。
カルテが廃棄されている
医療機関に受診歴はあっても、カルテなどの診療録が残っていないケースがあります。
何十年も前の受診である
古い受診の場合、本人の記憶だけでなく、当時の資料を探す必要があることがあります。
初診日がわからないからといって、すぐに諦めないことが大切
「初診日がわからない」
「病院がなくなっている」
「カルテがない」
という状況になると、障害年金の申請を諦めてしまう方もいるかもしれません。
しかし、初診時の医療機関による証明が取得できない場合でも、受診状況等証明書が添付できない申立書や、初診日を確認するための参考資料、第三者証明などを利用できる場合があります。(nenkin.go.jp
そのため、
「初診日を証明できないから申請できない」
と自己判断するのではなく、まずは現在手元にある資料を整理し、どのような方法で初診日を確認できるのか検討することが大切です。
障害年金の初診日でよくある質問
Q.今の病院を初めて受診した日が初診日ですか?
必ずしもそうではありません。
同じ病気やけがについて以前に別の医療機関を受診している場合は、原則として一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日になります。(nenkin.go.jp
Q.初診時の病院が閉院している場合はどうすればいいですか?
「受診状況等証明書が添付できない申立書」を使用し、初診日を確認できる参考資料などを準備する方法があります。(nenkin.go.jp
Q.診察券しか残っていません。初診日の証明になりますか?
診察券は初診日を確認するための参考資料となる場合があります。ただし、診察券だけで必ず初診日が認められるとは限りません。
Q.お薬手帳は初診日の証明に使えますか?
お薬手帳も、初診日を確認するための参考資料となる場合があります。特に医療機関名や処方日などが確認できる場合には、資料として活用できる可能性があります。
Q.初診日がまったくわからない場合でも申請できますか?
初診日を確認するための資料を集め、状況に応じた方法を検討する必要があります。
初診日の確認方法には複数の方法があるため、資料が何もないと思っていても、過去の受診歴や健康保険の記録、紹介状などを確認してみることが重要です。
まとめ|障害年金では初診日の確認が重要です
障害年金の申請では、初診日の確認が非常に重要です。
初診日は、単に病名が確定した日ではなく、原則として障害の原因となった病気やけがについて初めて医師等の診療を受けた日を指します。
そして初診日によって、
- 障害基礎年金・障害厚生年金のどちらを請求するか
- 保険料納付要件
- 障害認定日
- 請求方法
などに影響する可能性があります。
特に、
「初診時の病院が閉院している」
「カルテが残っていない」
「転院を繰り返している」
「初診日が何十年も前」
「最初の病名と現在の病名が違う」
といった場合は、初診日の確認が難しくなることがあります。
しかし、初診時の医療機関から証明書を取得できない場合でも、参考資料や第三者証明などを利用して初診日の確認を検討できるケースがあります。(nenkin.go.jp
「初診日がわからないから申請できない」とすぐに諦めるのではなく、まずは過去の受診歴や手元にある資料を整理してみましょう。
障害年金の初診日は、その後の請求手続きにも関わる重要なポイントです。判断が難しい場合には、年金事務所や障害年金に詳しい社会保険労務士などの専門家に相談することも一つの方法です。
障害年金の申請を検討している方は、初診日の確認から準備を始めてみることをおすすめします。
※本記事は障害年金の初診日に関する一般的な制度を解説したものです。実際の初診日の判断や必要書類、請求方法は個々の事情によって異なります。


コメント