発達障害でも、日常生活や社会生活に大きな支障がある場合は、障害年金を受給できる可能性があります。
自閉スペクトラム症(ASD)やADHDなどを対象に、受給条件、等級の目安、働いている場合の考え方、初診日や診断書など申請時の注意点を分かりやすく解説します。
発達障害でも障害年金を受給できる?
結論からいうと、発達障害でも障害年金を受給できる可能性があります。
障害年金の対象となり得る発達障害には、例えば次のようなものがあります。
- 自閉スペクトラム症(ASD)
- 注意欠如・多動症(ADHD)
- 学習障害・限局性学習症(SLD)
- その他の発達障害
ただし、「発達障害と診断されていること」だけで障害年金が認定されるわけではありません。
障害年金では、診断名だけでなく、発達障害によって日常生活や社会生活にどの程度の支障が生じているかが重要になります。
例えば、次のような困難が継続している場合には、障害年金の対象となる可能性があります。
- 食事や身の回りのことに援助や見守りが必要である
- 金銭管理が難しく、家族などが管理している
- 一人で外出することが難しい
- 人とのコミュニケーションがうまく取れない
- 予定や時間の管理が難しい
- 指示を理解できず、仕事で繰り返しミスをしてしまう
- 感覚過敏や強いこだわりによって生活に支障がある
- 職場に配慮を受けても、安定して働き続けることが難しい
- 家族の支援がなければ日常生活を維持できない
障害年金の認定では、日常生活能力や社会生活への適応状況などを総合的に判断します。精神障害に関する等級判定では、診断書に記載された日常生活能力の評価だけでなく、現在の状態、療養状況、生活環境、就労状況なども考慮されます。
発達障害で受給できる障害年金の種類
障害年金には、主に「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
どちらを受給できるかは、原則として発達障害について初めて医療機関を受診した日、つまり「初診日」に加入していた年金制度によって決まります。
初診日に国民年金へ加入していた場合
初診日に国民年金へ加入していた場合は、障害基礎年金の対象となります。
障害基礎年金には、1級と2級があります。
そのため、障害の程度が3級相当と判断された場合は、障害基礎年金は受給できません。
初診日に厚生年金へ加入していた場合
初診日に会社員などとして厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金の対象となる可能性があります。
障害厚生年金には、1級から3級までの等級があります。
障害の程度が3級に該当する場合でも、障害厚生年金を受給できる可能性がある点は、障害基礎年金との大きな違いです。
なお、初診日や加入していた年金制度によって受給できる年金の種類が変わるため、初診日の確認は非常に重要です。
発達障害の障害年金における等級の目安
発達障害の障害年金では、主に日常生活能力や社会生活への適応状況を踏まえて、障害の程度が判断されます。
障害基礎年金2級の目安
障害基礎年金2級は、日常生活に著しい制限があり、他者からの援助が必要となる状態が一つの目安です。
例えば、次のような状況が考えられます。
- 食事や入浴、着替えなどに援助や見守りが必要
- 金銭管理や買い物を一人で行うことが難しい
- 一人で外出することが困難
- 対人関係に大きな困難があり、社会生活を送ることが難しい
- 家族の継続的な支援がなければ生活を維持できない
- 就労が難しく、就労していない状態が続いている
ただし、無職であることだけで2級に該当するわけではありません。
就労していない理由や、日常生活でどのような支障が生じているかなども確認されます。
障害厚生年金3級の目安
初診日に厚生年金へ加入していた場合は、障害厚生年金3級に該当する可能性があります。
3級では、労働に著しい制限がある状態などが判断の対象となります。
例えば、次のような事情が考慮される場合があります。
- 一般就労を継続することが難しい
- 短時間勤務や限定された業務しかできない
- 職場から継続的な配慮や支援を受けている
- 業務上のミスや対人トラブルを繰り返している
- 休職や退職を繰り返している
- 就労を継続するために家族や支援者の援助が必要である
等級は、単純に診断名や就労の有無だけで決まるものではありません。日常生活の状況や就労状況を含めて総合的に判断されます。
発達障害で障害年金を申請するときの注意点
1.「できること」だけでなく「できないこと」や支援の必要性を伝える
発達障害のある方は、特定の分野では高い能力を発揮できる一方で、日常生活や対人関係に大きな困難を抱えていることがあります。
そのため、「仕事をしている」「一人暮らしをしている」といった一部分だけでは、実際の生活上の困難が十分に伝わらない場合があります。
例えば、一人暮らしをしていても、次のような支援を受けている場合があります。
- 家族が食事を準備している
- 金銭管理を家族に任せている
- 家族が頻繁に自宅を訪問して生活を支援している
- 通院や手続きに家族が付き添っている
- 電話やメッセージで毎日生活状況を確認してもらっている
形式上は一人暮らしであっても、実際には家族の支援がなければ生活を維持できない場合があります。
申請時には、「一人で生活している」という結果だけでなく、どのような支援を受けているのかを具体的に伝えることが大切です。
2.初診日を慎重に確認する
障害年金では、初診日の確認が重要です。
発達障害の場合、子どもの頃から特性や困りごとがあったものの、医療機関を受診したのは成人後というケースもあります。
この場合、原則として、発達障害の症状について初めて医師の診療を受けた日が初診日となります。
ただし、最初に受診した医療機関が閉院していたり、カルテが破棄されていたりして、初診日を証明する書類を取得できない場合もあります。
そのような場合でも、受診状況等証明書が添付できない申立書のほか、診察券、領収書、お薬手帳、紹介状、健康診断の記録などの資料によって、初診日を確認できる可能性があります。
初診日によって、加入していた年金制度や保険料の納付要件、受給できる年金の種類が変わるため、慎重な確認が必要です。
3.診断書には普段の生活状況を正確に反映してもらう
障害年金の診断書では、日常生活能力や就労状況などが重要な判断材料となります。
しかし、診察時間が限られているため、普段の生活で困っていることを十分に医師へ伝えられていない場合もあります。
例えば、診察では「問題ありません」「何とか生活しています」と答えていても、実際には家族の支援を受けながら生活しているケースもあります。
診断書の作成を依頼する前に、次のような内容を整理しておくとよいでしょう。
- 食事や身の回りのことを一人でできるか
- 金銭管理や買い物を一人でできるか
- 公共交通機関を利用できるか
- 予定や服薬を管理できるか
- 他人とのコミュニケーションにどのような困難があるか
- 家族や支援者からどのような援助を受けているか
- 仕事でどのような配慮を受けているか
- 過去に休職や退職をした経緯があるか
具体的なエピソードを整理して医師へ伝えることで、実際の生活状況を診断書へ反映しやすくなります。
4.病歴・就労状況等申立書は具体的に作成する
病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの経過や、日常生活・就労上の困難を説明する重要な書類です。
「人間関係が苦手だった」「仕事が続かなかった」といった抽象的な記載だけでは、困難の程度が伝わりにくい場合があります。
重要なのは、発達障害の特性が、日常生活や仕事にどのような影響を与えているのかを具体的に説明することです。
5.働いていても障害年金を受給できる可能性がある
「現在働いているから障害年金は受給できない」と考える方もいますが、就労していることだけで不支給になるわけではありません。
発達障害の場合、就労状況については、勤務時間や仕事内容だけでなく、職場から受けている配慮や支援、仕事を継続するために必要な援助なども重要です。
例えば、次のような事情がある場合は、申請時に具体的に伝えることが大切です。
- 短時間勤務をしている
- 障害者雇用で働いている
- 業務内容を限定してもらっている
- 上司や同僚から継続的な支援を受けている
- 指示を文書や図で示してもらっている
- ミスを防ぐために複数回確認してもらっている
- 体調や特性に合わせて勤務時間を調整している
- 家族の支援がなければ就労を継続できない
一方で、一般就労を安定して継続しており、特別な配慮や支援を必要としていない場合は、障害の程度が軽いと判断される可能性もあります。
6.発達障害以外の精神疾患がある場合も確認する
発達障害のある方の中には、うつ病、不安障害、適応障害などを併発している方もいます。
障害年金の申請では、発達障害の特性だけでなく、併存する精神疾患を含めた全体の状態が確認される場合があります。
例えば、発達障害の特性による対人関係の困難に加え、うつ症状によって外出や家事が難しくなっている場合には、それぞれの症状が日常生活へどのような影響を与えているかを整理することが重要です。
発達障害で障害年金を申請する際のチェックポイント
申請前には、次の項目を確認しておきましょう。
- 発達障害について初めて医療機関を受診した日はいつか
- 初診日にどの年金制度へ加入していたか
- 保険料の納付要件を満たしているか
- 日常生活でどのような支援を受けているか
- 一人でできないことや、援助が必要なことは何か
- 就労している場合、どのような配慮を受けているか
- 過去に休職や退職をした経緯があるか
- 医師に普段の生活状況を十分に伝えられているか
- 診断書と病歴・就労状況等申立書の内容に大きな矛盾がないか
まとめ|発達障害でも生活上の支障が大きければ障害年金を受給できる可能性があります
発達障害でも、日常生活や社会生活に大きな支障があり、障害の程度が認定基準に該当する場合には、障害年金を受給できる可能性があります。
ださい。
障害年金の申請では、初診日の確認や保険料の納付要件、診断書の内容、病歴・就労状況等申立書の作成など、専門的な知識が必要となる場面があります。
特に発達障害の場合は、診断名だけで判断されるのではなく、日常生活や社会生活でどのような困難があり、どの程度の支援を必要としているかを適切に整理し、申請書類へ反映することが重要です。
「自分の場合も障害年金を受給できるのだろうか」「申請を進めたいが、何から始めればよいか分からない」「書類の作成に不安がある」と感じている場合は、障害年金に詳しい専門家へ相談することも一つの方法です。
弊所では、障害年金の申請に力を入れており、ご相談者様の状況を丁寧にお伺いしたうえで、受給の可能性や申請手続きについて分かりやすくご案内しています。
障害年金の申請をご検討の方は、まずはお気軽にご相談ください。


コメント